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USB オーディオ インターフェイスと USB 3.x の関係性

  • 2021年10月16日
  • audient
USB オーディオ インターフェイスと USB 3.x の関係性

Audient の iD シリーズを含め、市場に流通している USB オーディオ・インターフェイスは、標準的に多くのコンピューターが対応している USB 2.0 を転送規格として採用しています。

昨今の標準規格となってる USB 3.x や Thunderbolt は、USB 2.0 など従来の規格と比較して、より多くの帯域幅を利用できるため、その結果として高速なデータ転送を実現しています。しかしながら、多くの USB オーディオ・インターフェイス同様に Audient のオーディオ・インターフェイスも、最新の規格で利用できる帯域幅や高速な転送速度を必要としていません。

USB 3.x 規格は、データ転送速度が最大で 5Gbps から 20Gbps へと高速化され、USB 2.0 規格の最高データ転送速度である 480Mbps より高速にデータを転送できるようになりました。しかし、オーディオ・インターフェイスに USB 3.x の高速なデータ転送速度が必要となることは極めて希と言えます。

例えば、サンプリング周波数を 96KHz 、量子化ビット数を 24-bit として 44 チャンネルのオーディオを信号を転送する際に必要となるビット数(帯域幅)を計算すると、約 101Mbps の帯域が必要となることが分かります。

96,000Hz (96KHz) x 24-bit * 44 チャンネル = 101,376,000 bit(約 101Mbps)

同様にサンプリング周波数を 192KHz として計算すると、約 2 倍の 203 Mbps の帯域が必要となりますが、いずれの場合も USB 2.0 の規格で定められている最高データ転送速度である 480Mbps  を超える数値には至りません。

192,000Hz (192KHz) x 24-bit * 44 チャンネル = 202,752,000 bit(約 203Mbps)

参考まで、CD クオリティーの音質(44.1KHz / 16-bit)で 4 チャンネルのオーディオ信号を転送する場合は約 2.8Mbps となり USB 1.1 のデータ転送速度でも対応できます。

44,100Hz (44.1KHz) x 16-bit * 4 チャンネル = 2,822,400 bit(約 2.8Mbps)

実際は、デジタル変換されたオーディオ信号以外にも制御信号のデータなどが付加されるため、このような単純計算で得られる数値通りにはなりませんが、制御信号が必要とする帯域はオーディオ信号から比べれば極めて少ないため、無視できる範囲と言えます。

このように、実際に必要となるデータ量を計算してみると、単純計算をしてみても、USB 3.x 規格の定める、最大で 5Gbps から 20Gbps のデータ転送速度を必要としないことが分かります。

では、なぜ、昨今のオーディオ・インターフェイスは USB Type-C 接続に対応しているのでしょうか?

<USB Type-C は必ずしも USB 3.x ではありません>

昨今のオーディオ・インターフェイスは USB Type-C 接続を採用することが多くなっていますが、USB Type-C 接続に対応したオーディオ・インターフェイスが、必ずしも USB 3.x 規格のデータ転送速度に対応しているわけではありません。

これは、USB Type-C 規格がコネクタの形状とその電気的な特性を定めている規格であることに対して、USB 3.x 規格はデータの転送に関する性能を定めている規格であり、それぞれが異なる内容を定めていることに起因します。

よって、USB 3.x 規格に準じた高速なデータ転送が必要な機材は USB Type-C を含む USB 3.x ケーブルに対応する必要がありますが、USB Type-C ケーブルは下位互換性により USB 2.0 規格によるデータ転送にも対応しているため、USB 2.0 規格の機材であっても USB Type-C ケーブルで接続することができます。

USB 3.x 規格に対応していない機材が USB Type-C 接続を採用する理由は、メーカーの設計思想にもよりますが、主に、以下のような理由が考えられます。

  • 逆差し可能な小型24ピンコネクタ規格による、コネクタの上下方向を気にしない接続性を提供
  • 従来の接続方式に比べ余裕のある電源供給(USB Type-C 規格では最大で 1,500mA = 1.5A まで供給可能)

Audient 社の iD シリーズや EVO シリーズは USB Type-C ケーブルで接続する仕様ですが、実際は USB 2.0 規格に準じたデータ転送を行っています。しかし、USB Type-C 接続を採用することで、ファンタム電源を供給できるマイクのチャンネルを増やすことができるなど、USB Type-C 接続による電源供給のメリットを享受できる設計となっています。

このように、実際には必ずしも USB Type-C 接続が USB 3.x 規格に対応しているわけではなく、機器の設計によっては USB Type-C 接続であっても、データの転送は USB 2.0 規格に準じている理由がおわかりいただけたのではないかと思います。