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プロスタッフがAudient EVO16で仕事帰りにサクッとバンド録音に挑戦

  • 2022年10月4日
  • レコーディング
プロスタッフがAudient EVO16で仕事帰りにサクッとバンド録音に挑戦

2022年に世界最大の楽器展示会NAMM SHOWにて発表され、夏には日本でも発売が開始されたAudient EVO16。イギリスで25年以上スタジオコンソールをはじめとし、録音機器や音響機器を手掛けているAudient社が初~中級者のホームスタジオ向けに開発したEVOシリーズの中でも24in/24outの入出力を備えたマルチチャンネル対応オーディオインターフェイスです。

EVOシリーズの特長はなんといってもそのシンプルな機能性と手軽な操作性。エンジニアの知識が無くとも、手間をかけずに良い音がすぐに録れてしまう優れモノなのです。

今回はそのEVO16を使って、ドラム録音を含むバンドサウンドをレコーディングしたというRockoNのプロスタッフ3名にそのノウハウとEVO16の特長について教えてもらうべく、インタビューさせていただきました。RockoNは東京・渋谷と大阪・梅田に店舗を構え、オンラインストアでも充実したオーディオビジュアル関連の機材を幅広く取り扱う専門店。

そんな専門店のプロスタッフがなぜEVO16を使ったバンド録音にトライしたのか。オールアクセスインターナショナル(AAI)の担当が、同店スタッフのクーパー天野氏、PD安田氏、イタリー多田氏に詳しくお話を伺いました。仕事や学校帰りの数時間でもサクッとバンド録音できるノウハウをはじめ、記事の最後には楽曲と使用機材にも触れているので是非最後まで読んでみてください。

EVO16を使った録音の様子

AAI(以下”A”) : まずは自己紹介をお願いします。

クーパー天野氏(以下”天”):私は今回ギターとマイキング、録音を担当しました。このバンド3人ともそうですが、RockoN渋谷店で販売スタッフをしています。好きな音楽はメタル、ハードロックです。
PD安田氏(以下”安”):ドラムと作曲、ミックスを担当しています。私はフュージョン系の音楽が好きです。
イタリー多田氏(以下”多”):ベース担当です。ジャズが好きです。

A:EVO16を使ってバンド録音をされたきっかけを教えて下さい

天:Audientのオーディオインターフェイスはもともとマイクプリの音質の高さに定評があります。さらに今回使用したEvoシリーズは価格もリーズナブルで、EVO16に関してはチャンネル数が多くドラムなどを録るにはうってつけの製品なんです。使いやすさも考えられていますし、録音されたサウンドは高価格帯のオーディオインターフェイスと比べても引けを取らないクオリティだと思います。そんな製品が出たタイミングで、お店でも取り扱っている製品を使いながらデモ曲を作ってみよう、という企画が持ち上がり、せっかくだからバンドで録音しよう!ということになりました。

A:今回の曲について、こだわりがあれば教えて下さい

天:バンド名を「東海道本線ズ」にしたので熱海から米原間にある駅数と同じ83曲を作るというのを目標に掲げています。なので、今回作った1曲目のタイトルは「ATAMI」です。

安:バンドがスリーピースというシンプルな構成なので、タイトなリズムで聴かせる7/8拍子という変拍子にこだわって作曲しました。EVO16はクリアに録れるので、その辺りのこだわりもしっかり感じ取っていただけるのではと期待しています。

A:ドラム録音について教えてもらえますか?

ドラム録音のセッティング

安:ドラム録音は突き詰めるなら12チャンネルくらい使うこともあるんですが、今回はEVO16に搭載されている8チャンネル全てを使わず、トップ左右に2本、キックに1本、スネアとタムにそれぞれ1本ずつの合計6チャンネルのみ使用しました。上図のような割と絞ったマイキングでの録音でしたが、結果的には何のそん色もなく、良い音で録れました。 また、ドラムは録音する時にドラム自体の音が大きいのでヘッドホンアンプにパワーが無いとモニター音が聞こえにくかったりすることもありますが、EVO16は十分な大きさの音でモニタリングできるので快適に作業が進みました。

A:マイキングで何か注意した点はありますか?

安:キックの音を録る時に、バスドラの穴の中にマイクを入れるのか、外に出すのかは試行錯誤しました。最終的にはマイクの特性も踏まえてバスドラの穴の中に入れてレコーディングしたんですが、アタックもローしっかり録れていてマイク1本で十分でした。

天:ドラムのトップに左右に振って立てたマイクに関しては、無指向性のマイクを使ってAB方式にしています。二つのマイクをスネアからの距離が均等になるようにスティックを使って測るなどして細心の注意を払っています。他にも単一指向性や双指向性マイクを使うXY方式や、2本の単一指向性マイクの間隔を人間の左右の耳の距離と同じ17cm空けるORTF方式など色々ありますが、今回は先に使うマイクを決めてその特性(無指向性)に合わせてAB方式を採用しています。

安:ドラムキット全体を録りたい場合は無指向性、シンバルなど特に狙って録りたい音がある場合は指向性のあるマイクを使うのが基本です。今回スネア用に使ったLewitt MTP440もそうですが、他にもタム、キック、それぞれのマイクも指向性と音質を加味して選んでいます。マイキングやマイクにも種類や役割、特徴があるのでみなさんもご自身でも色々と調べてみて下さい。

天:ドラムはマイクを立てるだけでもかなりの時間がかかります。今回は仕事終わりに3時間で終わらせるつもりだったので、配線やマイキングなど事前のプランを綿密に準備して臨みました。1時間練習、1時間ドラム録音、1時間ベース録音、そしてギターなどの上物は自宅で仕上げました。

A:ベースやギターの録音に関してはいかがですか?

多:ドラムで6チャンネルしか使っていなかったので、ベースは基本的にEVO16に挿しっぱなしでしたね。マイク1本だけで録音しています。安いオーディオインターフェイスでは、ダイナミックレンジが狭かったり、ローが十分に録れないこともあるのですが、EVO16は121dBとダイナミックレンジも広く、かつ低域も十分すぎるほど録れました。DIで細かな調整をすれば、さらに理想の音に近づけることもできると感じました。

天:ギターに関しては自分の中でこのアンプのマイキングでおいしく録れるポイントを既に把握しているので、いつも通りのマイキングで録音しています。そのセットアップでEVO16につないで、狙った通りの音で録れています。自分が使う機材に関しては、毎回これ!という決まった設定を持っておくとレコーディングもスピーディに作業が進むのでおすすめです。

A:EVO16のおすすめの機能について教えて下さい。

天:やはりスマートゲイン機能ですね。全てのチャンネルのレベルを一気に自動で最適な音量に設定してくれる機能なんですが、約10秒から15秒程度で設定が完了するので、サウンドチェックはとても楽になりました。実は音量の調節というのはプロでもなかなか難しい作業です。ドラムの場合は「キックからお願いします」とひとつずつレベル調整していくので慣れたエンジニアでもだいたい4~5分はかかりますが、EVO16を使えばすべてのチャンネルのレベル調整が同時にできて、しかも10秒ちょっとで終わります。

A:スマートゲイン機能のレベル設定は適切でしたか。

天:本当にちょうど良いレベルに設定されていたと思います。マージンを取りすぎて小さすぎることもなく、ギリギリのピークに合わせて曲中で音割れしてしまうと言ったこともありませんでした。演奏のダイナミクスの中で本当にちょうどいいポイントを自動で検出してくれました。

安:スタジオに行って軽く練習がてら叩いていたんですが、いつの間にかレベル調整が終わっていて、「もうレコーディングできるよ」と言われて驚きました。かなり時間が節約できた印象です。気分が乗っている時にサウンドチェックを挟むことでクールダウンされてテンションが下がることもあるのですが、これならテンションを下げずに録音できますね。

A:新しく搭載されたMOTION UIはいかがでしたか。

天:本体にあるノブ1つで全ての操作が直感的にできるのは良いですね。初めて使う人でもカラー液晶に出てくるメニューを見ながら迷わず目的の画面までたどり着ける印象です。グラフィカルで分かりやすいですし、ディレクトリもとてもシンプルで考えられた設計だと思います。液晶の動きもぎこちなさが一切なく滑らかな挙動に感じました。使い勝手について気にならないということ自体が使いやすさの表れだと思います。

ちなみにファンタム電源を使う時におばけ(ファンタム=Phantomは”おばけ”の意味)のアイコンが出てくるんですけど、そうした遊び心もあって可愛いですね。(笑)

A:他社の製品と比較してみてEVO16はいかがでしょう。

天:今回使ってみて、ハイエンドの製品ともサウンド的には特にそん色ない印象でしたね。

安:値段を知らなかったら、この価格(税込¥78,320)には驚きますね。見た目も作りも、もちろん録り音も一切安っぽいところが無いので、20万円前後のオーディオインターフェイスだと言われても正直信じてしまうかもしれません。見た目に関しては中性的でまるっこいフォルムなので、初心者の方でも親しみやすいでしょうね。

多:ハイもローもしっかりクリアに録れていて余計な装飾がないので、後で加工がしやすいサウンドだと感じました。8チャンネルマイクプリを搭載していて10万円以下となると対抗機種自体も少ないので、現状だとAudient EVO16一択になりますね。市場では世界的に半導体不足で多入力の新製品が品薄です。もしご自身のニーズさえ満たすなら、今が買いだと思います。

A:マルチチャンネルでレコーディングをする時に気を付けたいことはありますか?

天:事前準備が一番大切ですね。配線やマイキングもそうですが、DAWソフト上で必要なセッションを事前に作っておくなど、スタジオでなくてもできることは全て準備しておくといいと思います。あとはレベル設定が重要ですね。ドラムの全ての音のレベル設定には細心の注意が必要です。録音し終わってから実はレベルオーバーしてしまっていた、なんていう事態は絶対に避けたいですから。なので、EVO16のスマートゲイン機能はとても重宝しました。

A:EVO16はどんな方におすすめしたいですか

天:今回のようにドラムを含めたバンド録音をされたい方や、ループバック機能が付いているのでライブ配信したい人やソフトのアンプシュミレーターを使いたいという方には良い選択肢になると思います。家に複数のシンセを持っている方、デジタルで24チャンネルまで拡張できるので色々な使い勝手が考えられる製品です。

多:学生さんには良いと思います。決して高い製品ではないのでお金を出し合ってバンドやサークル・部活の財産にしてもいいんじゃないですか。ライブ配信も出来ますし、使い方が簡単なので、高性能な製品にありがちな持ち主しか使い方が分からない、ということがありません。誰にでも使えるのでレコーディングが身近になりますよね。

安:仕事帰りにレコーディングがサクッと出来てしまうので、サラリーマンミュージシャンにもおススメですね。それと、スマートで無骨な感じが無いので、見た目重視の人にもおススメです。

A:これからレコーディングしたい人、ステップアップしたい人へメッセージをお願いします。

天:経験値を上げることも大事なので、何度もトライして色々試してください。

安:録音はオーディオインターフェイスだけでなくマイクも重要になりますのでマイク選びも色々と検討してみて下さいね。

多:繰り返しになりますが、とにかく下準備をしっかりして数をこなしましょう。

「マルチチャンネルでレコーディングをしてみたい!」と考えている皆さんも、もし録音や機材に関する相談・疑問があったらRockoN渋谷店へ相談しに行ってみましょう。きっと経験豊富なプロスタッフが懇切丁寧に的確なアドバイスをくれますよ。

■ RockoNの公式HPはこちら
■ EVO16製品ページはこちら

楽曲:「ATAMI」by 東海道本線ズ

楽曲:「ATAMI」by 東海道本線ズ
バンド編成はドラム、ベース、ギターの3ピースと潔くシンプルな構成ながら、曲は7/8拍子という変拍子でリズムの粒立ちがシャープでタイトなサウンドが特徴的だ。作曲した安田氏がフュージョン好きということからもリズムにこだわりが伺える内容になっている。使用したマイクや機材は以下の通り。ファンタム電源が必要なマイクを3本同時に使っているが何の問題も無く駆動したという。

【使用機材】
ドラム:SONOR SQ1 Series(10″HT+12″LT+16″FT+22″BD)
ギター:Fender Stratcaster Yngwie Malmsteen signature model by Yuriy Shishkov
ギターアンプ&キャビネット:AMATERAS 5301
ベース:Benavente SCB5
ベースアンプ&キャビネット:Ampeg SVT-450H & SVT810E
PC:Macbook Pro(M1チップ)
DAWソフト:ProTools

【マイク】

ドラム:トップ LR:Earthworks TC25
スネア:Lewitt MTP440
タム:Lewitt DTP340TT
キック:SR20 w/KickPad
ギター:AEA N22 / Shure SM57
ベース:Lewitt DTP640REX(Condencer)